ハナクソ魔人はお留守番

それは到底止むようには思えない雨だった。世界は冷ややかさに包まれ、辺りには自動車が水しぶきをあげる音だけが響く。靴下はずぶ濡れで、足取りは重い。このまま永遠に暗闇から抜け出せないような、そんな気がした。

 

雨というのはどうも苦手だ。昔は濡れるのも厭わずはしゃいだものだが、今ではそんな気力も、体力も失ってしまった。それどころか、ただただ息が詰まるようなやるせない気分にさえなってしまう。そんな雨であるが、ときには僕にとって恩恵となることがある。

 

ところで、僕のハナクソはでかい。

 

それはもう、絶望的に。

 

大事に育てたらそれはそれは巨大なハナクソになるのだが、大抵の場合は成長を待たずして採集してしまうことになる。鼻の中で育てるというのは想像以上にむずむずするものだ。

 

そんな成長途上で芽を摘まれた未熟なハナクソでさえ、周囲からでかいという評価を受けるのだから、一体僕のハナクソがどれほど巨大なのか見て取れるだろう。

 

もともとアレルギー性鼻炎が酷く、花粉の猛威にも毎年やられているのだが、どうもホコリなんかでもハナクソは育つらしい。

 

そこで活躍するのが雨である。

 

雨はふわふわと漂うホコリもろとも地面へと叩きつけてくれる。空気は澄み、鼻の中は実に快適だ。大学が始まってからというものの、ハナクソたちはなかなかの豊作だったのだが、きのうまでと打って変わって今日は記録的な不作となった。

 

そんな鼻炎に優しい雨ではあるが、ずっと雨というのもやはり気分が上がらない。引きこもりは引きこもりなりに最低限の太陽を浴びたいものだ。何事もほどほどが丁度良い。

 

採集したハナクソが作物のように売れるならずっと豊作でも構わないのだが......。