お尻を拭いたら見えるもの

人によって指標の異なる概念を一般的に解釈することは実に難しい。「普通」とか「常識」とか、そういう類いの言葉をさも自分が絶対的に正しいかのように振りかざす人間なんて自転車のカギを排水溝に落として二週間くらい落ち込めばいいと思う。

 

かく言う僕もまさに今これに悩まされている。まともな記事を書こうと意気込んだはいいものの、笑えてくるほどに何も思いつかない。そもそもまともな記事を書きたかったらまともな記事とは何かを定義しなければならない。人生最大級の難題である。

 

そんなことを考えている間に僕のおなかはきれいにリフレッシュされていた。我に返った僕はトイレットペーパーを手に巻き取り、かわいいお尻を優しく撫で拭く。

 

そういえば、ヒトっていつからうんちをした後お尻を拭くようになったんだろう。

 

当然の疑問だ。ヒト以外にうんちをした後お尻を拭くような動物は見たことがない。うんちをした後お尻を拭くことこそがヒトをヒトたらしめるゆえんであろう。進化の過程のどこかのタイミングできっと初めてお尻を拭く瞬間があったはずだ。今回はうんちをした後お尻を拭く習慣について考察していく。

 

調べてみると、まずヒトがうんちをした後お尻を拭かざるを得なくなってしまったメカニズムが二点明らかになった。

 

一点目は、臀部の発達。直立したままの激しい運動を可能にするためお尻の筋肉が発達した結果、肛門が奥に隠れてしまったのだ。これではうんちはお尻をびちゃびちゃと汚しながらでしか体内から脱出することができない。

 

二点目は、肛門括約筋の発達。二足歩行をするようになったヒトのうんちは、重力に引かれるままどんどん下に落ちようとしていく。そして落下するうんちをしっかり抑えてくれるのが肛門括約筋だ。

しかし、肛門括約筋の発達は思わぬ弊害をもたらした。四足歩行のときは踏ん張ることで直腸がむき出しになりそこからうんちがぽとんと落ちることできれいな脱糞を達成していたが、二足歩行の引き締まった肛門ではこれが不可能だ。うんちはうんちだけの力で這い出てくるしか方法がない。

 

以上の理由から、ヒトがうんちをした後お尻を拭くのは、単に「汚い」という感情が発達したというだけの話ではなく、実に理にかなった行為であることが判明した。

 

ただ、一体いつからお尻を拭くようになったかという点に関してはいまだ謎に包まれたままである。人類の歴史は奥深い。