「そんな日もあったな」 過去を振り返る際の最強の言葉だ。 思い出というのはどうして美化されるのだろう。 口を開けばつらいしんどいと弱音を吐いていた時期だって、何年も経ってしまえば面白いようにその頃を良き過去として回顧する。 そうして昔は良かっ…

情けは人の為ならずとはよく言ったものだ。 人にかけた情けはやがて巡り巡って自分の恩恵として返ってくるのだから、人には親切にしろという意味の言葉らしいが、やれやれ油断した。どうやら返ってくるのは情けばかりではなかったらしい。 思い返すと、なか…

たとえば、僕が「晩ごはんどうしようかな」と口にしたとする。それを聞いたある人は思うだろう。 「この人はおなかがすいたんだろうな」 またある人は、こう思うかもしれない。 「沈黙に耐えかねて何か喋ろうとしたんだろうな」 言葉の真意というものは、そ…

蝉がうるさく求愛をする季節にまんまと乗り遅れた僕は、それはもう絶望的に、これまでにないくらいの勢いで体調を崩してしまった。 その間画面の中でひたすらインクを撒き散らす2週間を過ごしたばかりに僕の筋力はすっかり衰え、騎虎の勢いで迫り来る師走を…