恋する大蛇は特大うんち

合理性と一貫性に欠けた感情というものが大いに猛威を振るう市場の代表格であるところの恋愛という分野は、非論理的な思考回路を嫌うある意味で頭の固い部類の人間にとっては、ただ目に入ったというだけで理不尽に叩き殺される黒光りした昆虫のように忌み嫌われたものであることに違いない。

 

選民思想、本能主義、排他思考のオタク三大要素を見事に制覇した、それこそゴキブリのように救えない存在であるこの僕にも、そういう色恋沙汰にうつつを抜かした時期はあったのだが、どうも他人の感情を推し量るというのは難しい。

 

「優しいところが好き」と言ってくれた人は「優しすぎるよ」と言って僕の前から姿を消し、「私だけを大切にしてくれるところが好き」と言ってくれた人は「大切にされすぎてしんどい」と言って僕のそばから離れていった。好きになったところが原因で好きではなくなっていくというのは実に滑稽であるが、案外恋愛というのはそういうものなのかもしれない。

 

今となっては引きこもり留年オタクと、これまた庇いようのない肩書きが増えてしまい、ただただ浮いた話とは無縁な生活が続いている。

 

ところで、「自動洗浄機能が素晴らしい」ときのう絶賛した超高機能トイレについての話であるが、今日も今日とてそのトイレで用を足してきた次第である。

 

するとどうだろうか、今日はなんだかいつも以上に、いや、もしかすると人生最大級と言っていいほどに快便ではないか。あまりの嬉しさに股の間から便器を覗くと、大蛇と見間違えるほどに、それはそれは長いうんちが途切れることなくとぐろを巻いていた。

 

これは写真に収めて友人に自慢しよう!!

 

テンションが上がりすぎた僕は、お尻も拭かぬまま立ち上がり、下ろしたズボンをまさぐりスマホを取り出そうとした。

 

次の瞬間。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、バッシャーーーーン!!!

 

すべてを飲み込んでしまうような鋭い音が狭い個室に轟々と鳴り響く。嫌な予感がした。

 

慌てて振り返ると、あんなに立派だった大蛇の姿はもうそこにはなく、便器の底にはブラックホールのように先の見えない暗い空間が不気味に広がっていた。

 

「自動洗浄機能......余計なことをしやがって............」

 

好きなところが原因で好きではなくなる。恋愛に限らず、人間の感情は実にきまぐれでわかりづらい。でもだからこそ、人と関わるのは面白いのかもしれないね!

 

まあ、これはあくまで一般論で、僕からしたら人間関係というのは面倒なことばかりなんだけれど。

 

特大うんちを撮影できなかった哀しみに暮れながら、今日も僕はお尻を拭くのであった。